コート・ダジュール - 紺碧の海岸が映すもの
コート・ダジュール ----- 2月、まだ肌寒さが多少残る南仏コート・ダジュールを丸6年ぶりに訪れた。西側に隣接するプロヴァンス地方の牧歌的雰囲気とは異なり、地中海の真っ青な空と紺碧の海岸の出迎えを誰もが受けることとなる。そこに広がるのはまさに欧州の古典的リゾート。
ふと空を見上げれば飛行機が紺碧の地中海上を飛んでゆく。自分も同じように見上げられていたのだろうか。
到着したNiceの天気は残念ながら曇り。しかし微かに西側に日没を見ることができた。晴れていれば真っ赤に輝く太陽が西側に沈み夜の帳がゆっくりと下りる様を鮮明に見ることができる。紺碧の海に沈む真紅の太陽は一度は見ておきたい絶景である。
Niceからバスに揺られることおよそ20分。Èzeに到着。
かつてはイタリアの名貴族サヴォイア家の支配下にもあった同村はサヴォイア統治時代に要塞化され、その小さな旧市街は細い路地が多く要塞の持つ独特の雰囲気を残している。
晴天のもとエズ庭園から地中海を望む。
地中海性気候らしい暖かい天気にも恵まれしばし時を忘れ日光浴。
再びNiceに戻り海岸へ。斜陽の暖かさが心地よい。
人々も思いおもいの時を過ごす。憩いの場としてのコート・ダジュール〈紺碧海岸〉が顔を見せる。
「老人と海」、と言ったところだろうか。
海岸からの景色も美しさは十分だが、この円筒形の展望台からの眺めは更に目を瞠る。
この日はカーニバル開幕の前日とあり前夜祭の巨大な山車が街中に突如現れどこかシュールな雰囲気を醸し出す。今年のテーマは「食」だとか。類まれな食文化を育んできたフランス、中でも海山両方の幸に恵まれた南仏らしい発想だ。
カーニバルの山車が街中に消えてゆくと真紅の太陽が西空を、そして紺碧の海をも緋色から鈍色へと変えてゆく。
街中では移動遊園地の観覧車が目立ち始め、街自体も小さな宝石の集合体のように輝きを放ち始める。
太陽が地球の反対側へと移動するのを見届けた後、街中に目を移せばそこは昼間とは別の世界。細い路地の鈍い街灯の光や移動遊園地の眩い光、そして一軒一軒の家庭に灯る暖かい光が夜のニースを形成してゆく。まるで海辺に光る宝石のように。
コートダジュール、ニース。地中海を望むその古き街並みは長年、潮風に晒され風化しては補強するという工程を繰り返されてきたためか、どこか儚くそれでいて全てを知っているような重みのある佇まいが多いように思えた。街の雰囲気もどこか牧歌的ではあるが、洗練された部分も多く半都会・半田舎とでも表現すべき情緒をところどころで感じることができる。紀元前、古代ギリシャ人によって建設された湖の街は、現在のイタリア、そしてフランスなど支配国が幾度となく変わってきたためか、どこか他に左右されることなくマイペースな雰囲気が漂う小洒落た港町であった。