バルセロナ - 美食と情熱と太陽と
バルセロナ----- 4月、既に眩いばかりに輝く太陽と美食を求めカタルーニャの台所、バルセロナを数年ぶりに訪れた。暗く長い冬がまだ完全に明けぬドイツとは異なり、そこには既に海水浴を楽しむ人々、オープンテラスで陽気に弁舌をふるう人々の姿がそこにはあった。
ルート: バルセロナ
欧州線ならではのエアバス社製の中型機に乗り数年ぶりに降り立ったバルセロナは、潮の香りと雨のあと特有の匂いとが交じり合い、どこか日本の海辺の街を思わせた。
早速、潮風に吹かれながら美味な料理を探し求めて街中へ。
バルセロナを訪れるといつも必ず足を運ぶ「大衆食堂」にて自家製パエリアを食す。
このパエリアが食べられるのは週に2回だけ決められた曜日に日替わりメニューとして登場する。
バルセロナほどの観光都市ともなると街中の至るところでパエリアなどのスペイン料理の看板を目にするが、その殆どが観光客向けの冷凍パエリア。それらはどれも稚拙で凡俗な味付けで、その上無駄に高い。
その点、この店の素晴らしいところ旧市街の観光エリア内にありながら、当たり前だが全て手作りで地元庶民の味を手頃に味わうことができるところにある。
前菜、主皿x2、デザート、ワンドリンクのメニューで10EUR少しとかなりお手頃だ。
写真はクレマ・カタラーナ。スペイン風クレーム・ブリュレとでも言ったところ。
スペインの夜は長い。始まりが遅い分、終わりも遅い。
22時を過ぎてようやく活気が満ちてくるさまはドイツやオーストリアなどではまず目にすることのない光景だ。
ガウディがデザインしたとされる街灯を横に宿を目指す。
雨上がりのバルセロナをグエル公園より望む。
左に一際目立つ塔を抱えた建造物は今なお建築途中のサグラダ・ファミリア。
海沿いの街らしい香りと潮風が海岸より2㎞以上離れたこの公園でも感じられる。
南国らしい椰子の木が公園から望む地中海の景色に彩りを添える。
路上演奏家たちの姿もまた様々。
アントニ・ガウディの作品群の一つとして名高いこのグエル公園を代表するオブジェであるトカゲの噴水。
アール・ヌーヴォーの時代に主にバルセロナを中心に活躍したアントニ・ガウディ。彼を育んだカタルーニャという土地はスペインの中でも独自の文化を育んできた他文化圏とも言える。
言葉もスペイン語であるカスティーリャ語の他、カタルーニャ語が公用語として大学など公の場で用いられている。まさに日常生活を担う言葉からして異なるのである。
このカタルーニャの自由で多様性に満ちた文化は、その独自性故に高度な自治を求め独立を目指す動きさえあった。
これは、ベルギーなどにも言えることだが、何より単一国家において異なる言葉が使用されているということは大きな点だ。
ちなみに、この公園は1984年にユネスコの世界遺産に登録されている。
漁港で捕れた白身魚スープを前菜に。
魚介類のリゾット。
海産物のだしの効いた味付けは日本人の口に合わないはずがない。
エビのガーリック、オリーブオイル焼き。
ガーリックとオリーブオイルの香りがエビに絶妙な彩りを加えている。
Museu Nacional d’Art de Catalunya (カタルーニャ美術館) 前で冬の一時期を除き定期的に開催されている噴水ショーは圧巻。
噴水ショーと言えばラスベガスのベラジオ・ホテルやドバイのブルジュ・カリファ前のものなどが有名だが、このバルセロナのショーのクオリティーもかなり高い。
様々な色と音楽によって織りなされるその水のダンスは雄大で躍動感に満ちている。
ショーの後ともなるとあたりは既に薄暗く、その300万人都市はまた新たな一面を見せ始める。
幾何学的彫刻に外面を覆われたサグラダ・ファミリアは間近で見るとより一層その独特な外面に目を奪われてしまう。
前回滞在時よりはさすがに進捗している内部の工事。
無数に埋め込まれたステンドグラスの数々。
唯一無二のその作品が光を受けて輝く瞬間は思わず息を飲む。
街中の日常風景集。
モンジュイックの丘から望むバルセロナの街。
バルセロナの浜辺Barcelonetaは市民憩いの場。
カップル、家族連れ、画家、サーファー。皆それぞれ思い思いの時を過ごす。
そして再び太陽と海の恵をふんだんに用いたカタルーニャの美味な産物に舌鼓を打つ。
イワシにオリーブ。
そしてハモン・セラーノも忘れてはいけない。
スペインにはこうしたタパスという「おつまみ」を豊富に揃えたバルが数多く存在し、人々はこれらのバルで夜が更けるまで語らいあうのでる。
まさしくスペイン版の「居酒屋」、とでも言ったところだろうか。
エリンギのガーリックとオリーブオイル炒め。
無論、絶品。
スペインのハモン即ちハムは本来は保存食として食卓を彩ってきた。
ハモン・セラーノというハムは数多く存在するが、イベリコ豚のハモン・セラーノは一度食すとその滑らかな舌触りと脂味を帯びた食感は二度と忘れることが出来ない。
そして旅を締めくくるのはフラメンコ。
フラメンコは本来カタルーニャではなくアンダルシアの伝統文化。
だが、世界中でその情熱的で華麗な舞が知られるようになった今となっては最早それはあまり大きな問題ではないのかもしれない。
寧ろ重要視すべくはその質、クオリティーとアイデンティティを継承しているか否か。
これだけ世界的に知られてしまうと、万物共通でまがい物、質が著しく低いものなどが出まわるのが世の常。
このタブラオTablao Flamenco Cordobesではダンサーもアンダルシア出身者が多く、カタルーニャのバルセロナにいながらにしてクオリティーの高いフラメンコショーを楽しむことができる。
バルセロナ本格的なフラメンコを目にすることができるとすれば、唯一ここCordobesだけであろう。
海山の恵みを使った料理、情熱的な人々、そして煌々と輝く太陽。
地理的にも恵まれたカタルーニャのその州都は地図上ではスペインの一部でこそあれ、そこには確かに他とは一線を画した独自の文化が存在し、グローバル化で薄まりつつあるアイデンティティを大切にしながらも多様性にも寛大なコスモポリタンな街であった。